新専門医制度の導入とともに、人気の地域や診療科に希望が集中することを防ぐために2020年度の専攻医採用から都道府県・診療科においてシーリング(募集定員)が設定されることになりました。
これにより、専門医研修先を選ぶにあたって自分の希望の地域・診療科で働くのが難しくなる可能性が出てきました。
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シーリングって何?
医師過剰の地域に定員を設ける
新専門医制度の導入によって、専門研修プログラムは基幹施設と連携施設の病院群が作ることとなりました。しかし、以前と比べて指導医や症例数などの条件が増えたことにより、基幹施設が少なくなっているのが現状です。(詳しくはこちら)
そこで、人気の地域や診療科に希望が集中することを防ぐために、都道府県・診療科においてシーリング(募集定員)が設定されることになりました。
新専門医制度導入当初は、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡の5都道府県にはシーリングが設けられていました。しかし、これには明確な根拠がなく、愛知や神奈川など医師多数ではない県においてもシーリングがかけられている状況でした。これを解消するために、2020年度の専攻医採用から新たなシーリングの仕組みが導入されることとなりました。
シーリングの大枠は2つ
シーリングの大枠としては、①すでに必要医師数を確保できている都道府県・診療科ではシーリングを設ける、②採用数の一部として「他の都道府県での研修」に充てるプログラムを設定する、というものです。
①に関しては、2016年の医師数が「2016年または2024年の必要医師数」を上回っている都道府県・診療科がシーリングの対象となりました。つまり、人の殺到する都道府県や診療科は採用定員が設けられるということです。
参照:厚生労働省 都道府県別診療科ごとの将来必要な医師数の見通しについて
②については、シーリング上限のうち一部(2割程度)の枠で採用された医師に関しては、シーリングのかかっていない都道府県で50%以上の勤務を行う連携プログラムを設定するというものです。つまり、連携プログラム枠で採用された場合は、希望の都道府県・診療科で研修を行うためにその期間の半分ほどは地方での研修プログラムに参加するということです。
2019年5月14日厚生労働省「医道審議会医師分科会医師専門研修部会」資料
例えば、東京都で内科医を志望した場合
少しわかりづらいため、具体例を挙げてみます。
例えば東京都で内科を志望したとします。
東京都の内科のシーリング枠は438人、連携プログラムの枠は77人ですので、計515人が採用の上限となります。しかし、この515人全員が東京で研修を行うことができるわけではありません。連携プログラム枠で採用された77人は東京都以外の都道府県で、研修期間の50%以上を過ごす必要があります。
さらに、連携プログラムのうち一部(5%を上限)の枠は、都道府県限定分の連携プログラムとされていて、医師不足が顕著な指定の都道府県(青森、岩手など)で研修を行うことが必須となります。
シーリングによる医学生・若手医師への影響
シーリング数は今後変化する可能性大
シーリングが設けられることで、隣接する地域での医師数が変動する可能性が十分にあり得ます。これによって、現在シーリングが設けられていない都道府県・診療科においても今後シーリングがかけられることが予測されます。
例えば、東京都の皮膚科を見てみると、2020年度のシーリングは76名となっています。2019年度の採用数が86名であることから、東京都で皮膚科の専門医研修を行うのは狭き門となります。
このため、東京都で専門医として採用されなかった医師はシーリングのかかっていない神奈川県で研修先を選ぶ可能性があります。仮に、神奈川県で2020年度に多くの専門医採用が行われると、「2016年または2024年の必要医師数を上回る」状況となり、シーリングの対象となってしまいます。
このような専門医の動きなどを踏まえて、シーリング数は毎年度修正されることが予測されます。
医師不足の都道府県から「連携プログラム枠の拡大」等の要望も
連携プログラムは、シーリングが設けられている、すなわち医師が過剰の都道府県から医師不足の都道府県へと医師を派遣することが狙いです。
しかし、現状としては医師偏在を解消するには心もとない派遣数にとどまっています。実際、内科の場合だと医師不足が顕著な都道府県(青森県・岩手県・秋田など14県)に連携プログラムとして派遣される医師数は15名です。これは、1県当たり、3年間で0.58名分にしかならない計算になります。
シーリング数の厳格化や連携プログラム枠の拡大によって、医師不足地域で研修する医師を増やすべきとの声も多くの都道府県から挙がっており、今後もシーリング数や連携プログラム枠の拡大などに変動が生じる可能性もあります。
今後、適切なキャリアを築くためには
今後の国の動きに着目
新専門医制度が導入されたのが2018年度、さらに新たなシーリングの仕組みが導入されたのが2020年度と、非常に速いスピードのなか制度の変革が行われています。
また、医師数の変動によりシーリング数は変動したり、新たな連携プログラムが導入されることも予想されます。
医学生や若手医師は、引き続き制度の変革に注目し、適切な情報を集めることが必須となります。