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過去問の丸暗記は年々通用しなくなってきている

後述しますが、111回医師国家試験は過去10年間で最低の合格率となりました。
原因として、過去問と全く同じ問題の出題率が年々少なくなっており、より本質的な理解が伴った学習ができているかが問われる問題が増えてきています。特に必修問題でこういった傾向があるため必修問題で合格基準に達せず不合格になってしまった人が増えたと予想します。

よく「臨床実習に基づいた勉強ができているかが重要」と言われますが、過去10年分に出題された全ての問題を分析していますが、少し疑問です。
確かに臨床実習を大切にすることはとてもいいことですが、そもそも臨床実習の内容は大学によって大きく異なりますし、1-2週間の実習ですべての疾患を経験することは現実的に不可能です。
臨床実習自体が教育内容にどうしても差が生じてしまうため、その穴を机の上での勉強で補っていく必要が当然あります。むしろ臨床実習で学べることは医師国家試験で出題される内容のごく一部になってしまうのが現実だと思います。

その目線で過去問分析をしていくと、最悪臨床実習を行っていなくても、本質的な理解と暗記ができていれば何の問題もなく正解できることがわかります。

重要な注意点として、以前は過去問と全く同じ問題の出題率が高く、過去問3年分をとりあえず丸暗記してしまえば合格できたのですが、上述した通り過去問の丸暗記がだんだん通用しなくなっているということです。

そのため、下記に紹介している「病気がみえる」シリーズなどの参考書を用いて理解を伴った勉強を軸として、過去問演習はあくまでもその理解度、暗記の定着度の確認目的に使用することを推奨します。

これが徹底できていれば111回医師国家試験もほとんど困ることなく90%の正解は十分可能な内容でした。

*上記をふまえて当記事の勉強方法も大きく修正しています。

111回医師国家試験の分析

111回医師国家試験は過去10年間で最低の合格率

111回は難化したといわれていますが、実際合格率は88.7%であり、過去10年間で最低の合格率となりました。

必修問題が難化し、必修での不合格者が多い

合格率がこれほどに低下した最大の原因は必修問題の難化です。
必修問題は80%以上の得点ができないとそれだけで不合格となります。111回医師国家試験では、この必修問題でいわゆる臨床系の実践的な問題が増加し難易度もあがった結果、合格率が低下したと考えられます。

111回医師国家試験の合格率

全体では88.7%の受験生が合格しています。110回医師国家試験の合格率は91.5%でしたので、3%近くも低下し上記のとおり過去10年間で最低の合格率となりました。

既卒者の合格率は54.3%、新卒者は91.8%と新卒受験生は90%以上が合格していることがわかります。
しかし、このデータは卒業試験をクリアして国家試験を受験した医学生のうちのデータになりますので、卒業試験で留年してしまった医学生がいることも考えると、新卒医学生も安心はできない結果になったと思われます。

110回の医師国家試験では新卒受験生の合格率は94%をうわまわっており、新卒での合格率も3%近く低下しました。

110回医師国家試験の合格点

一般問題:128/198点 (64.6%)*不適切問題あり

臨床問題:381/600点 (63.5%)

必修問題:160/200点 80%

約100問(全体の20%)は過去問からの出題

111回の医師国家試験を分析すると、500問中約100問の実に20%がほとんど過去問と同じ問題でした。

しかし、109回の医師国家試験は500問中150問の30%、110回医師国家試験では500問中130問の23%程度が過去問からの出題であったことを考えると、年々過去問と全く同じ問題の出題が減少したといえます。

ただ、全く同じとはいえない問題でも、過去問を勉強することで正解できる類似問題も含むと、80%以上にのぼっています。

111回医師国家試験に向けた勉強においても、過去問の対策は必須であり、最も効率の良い勉強方法とも言えます。

注意点として、ただ過去問を丸暗記するだけでは近年の国家試験は対応が困難であるため、過去問を参考に周辺知識を整理していくことが重要になります。

121問(24%)は画像問題の出題

111回の医師国家試験では、500問のうち121問が画像問題の出題でした。約24%を画像問題が占めています。
さらに、臨床問題で画像問題の出題が多く、画像の読影が正確にできればそれだけで正答できる問題も多く占めているほか、必修問題にも画像問題の出題は多く、画像問題の対策は医師国家試験対策に必須と言えます。

医師国家試験の科別出題頻度ランキング

111回医師国家試験の科ごとの出題頻度ランキングを掲載しています。

例年公衆衛生の出題数がトップ

公衆衛生は毎年トップの出題頻度となっており対策は最優先で行う必要があります。111回でも62問と約12%の問題が公衆衛生からの出題でした。特に高齢化社会を背景とした公衆衛生領域の出題頻度が高くなっています。

産婦人科、小児科の出題頻度は高い

幅広い学習が必要であるため苦手意識を持つ医学生も多い産婦人科・小児科ですが、例年出題頻度は高く、これらを合わせると65問になり、全体の13%にも達するため対策は必須と言えます。

110回と比較しても増減はほとんどありませんでした。

循環器の出題が激増

111回医師国家試験では、110回と比較し循環器の出題が12問も増加し、全体で3番目に多い出題科目となりました。

急性冠症候群、心不全のほか、不整脈、救急疾患など幅広く出題されています。循環器領域は今年の国家試験でも多く出題されることが考えられるため、十分な対応が必要です。

112回医師国家試験における変更点

112回医師国家試験(2018年)から試験内容か下記のとおり大幅に変更されます。

第112回医師国家試験における変更点について(厚生労働省のHP)

・日程の変更:3日間 → 2日間

これはうらやましい限りですね。

・出題数の変更:500問 → 400問

必修問題と臨床実地問題に変更はなく、一般問題(必修以外の)が200問→100問と半減します。

・配点の変更

必修以外の臨床実地問題が各3点→各1点と変更されます。

・合格基準の変更

必修は変更なく80%以上の得点が求められます。

必修以外の問題では、これまで一般問題と臨床実地問題それぞれで合格基準が定められていましたが、合計での合格基準の設定に変更されます。

医師国家試験おすすめの教材

「病気がみえる」シリーズ

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「公衆衛生がみえる」
*公衆衛生は医師国家試験で最頻出分野なので必ず買いましょう!

 

「病気がみえる」シリーズは恐らく情報量、わかりやすさ、医師国家試験への対応度から最もおすすめの参考書です。国家試験勉強の中心にすることを強く推奨します。

また絵が豊富でわかりやすいことから医学部2-3年生でも十分楽しく読んでいけると思います。少なくともCBT対策のときから勉強を開始することをオススメします。

頻出科目である、公衆衛生・産婦人科・消化器・循環器・呼吸器・内分泌・神経 では病気がみえるを熟読しましょう。
*小児科がなぜか病気がみえるシリーズで出版されていません! 産婦人科は特にわかりやすいので小児科も早く出版されることが望まれます。”vol.11 の運動器出すなら小児科出して!” って病気がみえるシリーズが好きな医学生なら誰もが思ったはず。。

*病院実習の際に成書をいっちょ前にもちたくなる気持ちはわかりますが、病気がみえるシリーズを持ち歩いて国家試験に出題される知識と関連づけた実習を行う方が効果的ですし、実習としてもむしろよい実習ができると思います。それくらいとにかくわかりやすい、国家試験に対応している、覚えやすいです。

「レビューブック・マイナーブック」シリーズ


コンパクトにまとまっている整理本です。
眼科・皮膚科などのいわゆる「マイナー科」は病気がみえるシリーズにないため、「レビューブック・マイナー」が一番のおすすめ参考書になります。病気がみえるほどではないですが、写真もきれいでみやすくマイナー科対策としてはこれ一冊で十分です。

また、小児科も病気がみえるシリーズになりため、「レビューブック・小児科」が一番おすすめです。小児科対策は医師国家試験対策で必須なので必ず買いましょう。

マイナー・小児科は必須です。
一方、「レビューブック 内科・外科」は病気がみえるシリーズが圧倒的にわかりやすいため優先度は下がりますが、最近の医師国家試験では外科領域の出題頻度もあがってきており、対策としては必要になります。

「クエスチョンバンク(通称QB)」

科目別

回数別

過去問では第一候補となる問題集です。科目別の問題集と公衆衛生、必修対策、回数別の過去問があります。
過去問は3年分演習しておくことをおすすめします。

病気がみえるシリーズで勉強→過去問で演習→病気がみえるシリーズで復習 のサイクルが医師国家試験攻略の最短距離です。

*クエスチョンバンクの注意点
上記のとおり過去問問題集として最も定評のあるクエスチョンバンク(通称QB)ですが、一点だけ注意点があります。

それは、解説があまりにも多くの情報を載せていることです。
そこまで知っていなくても正解できる問題でも、あらゆる情報や表が掲載されているため、すべてを暗記しようとしてしまうと膨大な時間がかかります。

特に必修問題や臨床実地問題では、臨床に即した考え方を身につけることで出題者の意図がみえてくるようになります。ほとんどが、細かい知識は要求されていないので、回答に必要な事項だけピックアップして覚えていくようにしましょう。

*すべて揃えると高額・・
クエスチョンバンクはすべて揃えると高額になります。
科目別だけで75000円以上、回数別を3年分で19000円以上、合計すると9万円以上になります。
また非常に重くてかさばるため、人によっては勉強しづらい人もいるかもしれません。

画像診断対策

111回の医師国家試験では、500問のうち121問が画像問題の出題でした。約24%を画像問題が占めています。
さらに、臨床問題で画像問題の出題が多く、画像の読影が正確にできればそれだけで正答できる問題も多く占めているほか、必修問題にも画像問題の出題は多く、画像問題の対策は医師国家試験対策に必須と言えます。

「イヤーノート」


とても分厚い辞書です。イヤーノートはやらなくても医師国家試験合格は可能です。
ただ、医師国家試験よりもむしろ研修医になってからや内科認定医試験対策に活用できます。そういった点でも医学生のころから購入しておいて損はないと思います。

使用するのであれば、病気がみえるやレビューブックにのっていない項目で調べたいときにイヤーノートを使用する方法が一番おすすめです。
間違ってもイヤーノートを頭から読んだり、勉強の中心にするのはおすすめしません。

動画学習の大きな落とし穴

TECOMやMECなど、医師国家試験予備校の動画をメインで学習している医学生の方は多いと思います。

医師国家試験に残念ながら不合格だった友人5人にアンケートをとりましたが、全員が動画学習を中心としていたとの回答でした。敗因は、動画学習を終えることを優先しすぎて過去問を十分に対策する時間がなかったとの回答でした。

動画学習の考えうるデメリットを掲載します。

そもそも「病気がみえる」シリーズを読んで理解できないことはほとんどない

「病気がみえる」シリーズは絵が豊富で非常にわかりやすく書かれています。恐らくこちらを読んで理解できなくてわからないということはほとんどないと思います。もしわからないところがあれば友人と考えてみる、先生に聞いてみる、インターネットで調べてみるなどすればほとんど解決できるかと思います。

後述しますが、動画をみるよりも「病気がみえる」シリーズを何回か読んだり自分なりに整理してまとめてみるという能動的な勉強をしたほうが時間的にも効率がよく、また定着度も高いはずです。

「病気がみえる」シリーズを使ってみることを推奨します。

非常に時間がかかる

動画学習の最大のデメリットです。全部見終わるのに非常に時間がかかります。倍速機能もありますが、それでも本を読んだり過去問を解くのに比べるとスピードは格段に遅くなります。

演習が不足する

医師国家試験で得点していくためには、問題の演習を繰り返す必要がありますが、動画学習ではどうしても理解するための時間が多くなってしまい、演習が不足する傾向にあります。

受け身の学習となり頭が働かない

動画では、どうしても受け身の学習になってしまいます。本や過去問では、自分で考えながら学習を進めていきますが、動画ではぼーっと見ているだけでも進んでいくことができるため頭が働きにくいというデメリットがあります。

実際、動画を見終わったあとに覚えていることは、余程印象に残った部分くらいで、結局とったノートを見返す必要があると思います。そうすると倍の時間がかかりさらに効率は落ちてしまいます。

繰り返しの学習を行いにくい

動画では本に比べるとピンポイントで検索するのに不向きであるため、繰り返しの学習が行いにくくなります。

また、繰り返そうと思うと、結局動画一本をどうしても見なおしてしまいがちになり、時間がかかってしまいます。

理解だけで正解できる問題は多くない

動画学習は理解を助ける目的が強いと思いますが、医師国家試験は理解だけで正解できる問題は多くありません。

もちろんしっかり病態や薬理作用のメカニズムなどを理解しておくことは当然得点率向上に寄与しますが、理解しているだけでは正解できない問題が実は大部分を占めます。

暗記していないと解けない問題が多いため、どうしても過去問の繰り返しが必要になります。

医師国家試験で90%とるための勉強法

上記の分析から、医師国家試験で90%得点するための具体的な勉強法をお示しします。

「病気がみえる」「レビューブック」シリーズで頻出科目を学習:CBT対策から

開始時期としてオススメはCBT対策でもあわせて学習しておくことです。もちろん意欲のある人は3年生頃から用意しておき、授業にあわせて調べるとレポート作成にも「病気がみえる」は重宝します。

CBT対策で一通り読んでおいた上で5年生の病院実習でも活用するとより一層理解が深まると思います。病院実習で得た経験やレクチャーで習った項目があれば病気がみえるに書き込んだりノートに追記することでさらに効果的な学習ができるはずです。

成書は調べる程度に用いて、早期から「病気がみえる」を軸にした勉強をはじめておくことを強く推奨します。

(半信半疑の人は是非一度使ってみてください。有名なSTEPシリーズや成書よりも格段にわかりやすく、勉強もしやすいレイアウトになっています。)

開始時期が出遅れてしまって時間に余裕がない人は、上述の頻出科目リストの高い順番に「病気がみえるシリーズ」を勉強していきましょう。

公衆衛生も忘れずに!

*病気がみえるに掲載がない小児科やマイナー科は、「レビューブック」を使用しましょう。

過去問演習:6年生前半

「病気がみえる」シリーズを一通り勉強したら、過去問演習を行っていきましょう。

上述したとおり注意点として、過去問の丸暗記は通用しなくなってきています。例えばCushing症候群の検査内容の問題が過去問で出題されていて、それを丸暗記したとしても、本番で治療方針が問われれば正解はできません。Cushing症候群に関連する知識を「病気がみえる」で整理し暗記していれば正解できます。

過去問演習を行って不安な疾患、分野だと感じたら「病気がみえる」に戻って知識の再確認を行いましょう。また過去問で新たに得た知識があれば病気がみえるに追記していく使い方が有効です。

病気がみえるに載っていないものはイヤーノートで調べると恐らく掲載されていますが、そういった問題は解かなくても合格できる”捨て問”の可能性が高いです。

過去問をネタとしていかに病気がみえるの理解度、定着度を高めていくかが重要です。過去問演習自体は最新3年分で十分だと思います。(余力があれば4-5年分行うのもよいですが、それ以上に参考書の定着を優先させてください。)

過去問集としては「クエスチョンバンク」が適しています。

画像問題の反復学習

上述したとおり、全体の28%が画像問題の出題であり、画像問題の勉強は必須です。

画像問題は理屈で考えてもわからないことがほとんどで、逆にわかってしまえば一発で正解できる問題も少なくありません。

何度も画像問題に触れるしか対策方法はなく、最も効率的な勉強方法といえます。確かに読影方法をじっくり勉強することはとても大切ですが、細かい原理がわかっていなくても見たことがあれば解けてしまう問題が大部分を占めます。

必修問題の対策

必修問題は80%以上得点しないとそれだけで不合格になってしまうため重点的に学習する必要があります。
勉強の方針は「病気がみえる」と過去問を繰り返していくことが大切でかわりありませんが、必修問題の過去問で出題された内容はより重点的に勉強し、確実に暗記するようにしましょう。

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