2018.12/10に順天堂医学部による会見が行われました。
また第三者委員会による報告書を参照しまとめました。
文科省による調査データ
下記文科省による調査データによると、H30年の入試にて男女の合格率は1.93倍にものぼり、また男性4浪以上、女性3浪以上の合格者は0名となっています。
平成30年のデータ
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 男女比(倍) | ||||||
区分 | 男性 | 女性 | 計 | 男性 | 女性 | 計 | 男性 | 女性 | |
合計 | 2,372 | 1,779 | 4,151 | 239 | 93 | 332 | 10.1% | 5.2% | 1.93 |
現役 | 1,147 | 1,065 | 2,212 | 127 | 62 | 189 | 11.1% | 5.8% | 1.90 |
1浪 | 869 | 522 | 1,391 | 99 | 28 | 127 | 11.4% | 5.4% | 2.12 |
2浪 | 245 | 145 | 390 | 12 | 3 | 15 | 4.9% | 2.1% | 2.37 |
3浪 | 58 | 20 | 78 | 1 | 0 | 1 | 1.7% | 0.0% | ― |
4浪以上 | 53 | 27 | 80 | 0 | 0 | 0 | 0.0% | 0.0% | ― |
合否判定の方法について
一般A方式
一次試験
一次試験(学科試験)の偏差値順位と調査書の評価(Ⓐ,A,B,C,D,E)を基準として合否判定が行われた。
その際、下記のように学科試験の順位ごとによって性別や年齢による調整が行われていた。
1~200位 特別な理由がない限り合格。ただし、浪人年数の多い場合は検討。
201~300位 男3浪C以下不合格、女2浪C以下不合格
301~400位 男2浪C以下不合格、女1浪C以下不合格
401~500位 男2浪B以下不合格、女1浪B以下不合格
501~600位 男1浪C以下不合格、女1浪A以下不合格
601位以下 調査書評価がⒶまたはA等の人物から合格者を検討
なお、H29年の入試では、201位以降は上記と同じだが101位~200位において4浪以下不合格の基準が存在する。
<解説>
男性の場合、4浪以上であれば201位以降はすべて不合格(H29年の入試では101位以降はすべて不合格)。3浪であれば301位以降はすべて不合格で201-300位でも調査書がB以上でないと不合格、、ということになります。
女性の場合、3浪以上であれば201位以降はすべて不合格、2浪であれば301位以降はすべて不合格で201-300位でも調査書がB以上でないと不合格、、となります。
また、1-200位においても多浪生の場合は検討と記載されており、実際に文科省の調査データによるとH30年の男性4浪以上、女性3浪以上の合格者は0人となっています。
H30年の一般A枠での二次試験まで含んだ最終合格者の人数は376名となっています。
つまり、学科試験の成績では本来合格できる順位にいた受験生が、一次試験の段階で浪人年数や性別による基準によって不合格となっていたことがわかります。
会見にて、一次試験で不当に不合格になっていた受験生がH30年の入試だけで65名(男性23、女性42)いたと説明がありました。
学科試験で600位以内に入っていたものの、上記の基準により年齢や性別による調整のために不合格になった受験生が65名いたと予想されます。
また、その分については601位以降の恐らくは現役生と1浪の男性が一次試験の合格対象となっていたと予想されます。
二次試験
小論文0.4点満点、面接5.0点満点で得点化し、合格評価点として1.0~5.4点のうちで評価した(小論文は0-0.4点の0.1点刻み、面接は1.0-5.0点の0.5点刻み)。
合格評価点が2.5点未満の受験者は一律で不合格とし、2.5点以上の受験者の中から学科試験の順位ごとの基準により下記のように合格者、補欠者を決定した。
この際、女性は0.5点高い合格基準が設けられていた。
正規合格者(二次合格者数を超えた場合は補欠1Aとなる)
1~100位 男2.5以上、女3.0以上
101~200位 男3.0以上、女3.5以上
201~350位 男3.5以上、女4.0以上
351~600位 男4.0以上、女4.5以上
補欠1B対象者
1~100位 女2.5以上3.0未満
101~200位 男2.5以上3.0未満、女3.0以上3.5未満
201~350位 男3.0以上3.5未満、女3.5以上4.0未満
351~600位 男3.5以上4.0未満、女4.0以上4.5未満
補欠2対象者
101~200位 女2.5以上3.0未満
201~350位 男2.5以上3.0未満、女3.0以上3.5未満
351~600位 男3.0以上3.5未満、女3.5以上4.0未満
<解説>
まず小論文+面接5.4点満点のうち、2.5点未満であれば学科試験の成績に関わらず一律で不合格が決定しています。
また、女性の場合であれば仮に学科試験が1位であったとしても、小論文+面接2.5〜3点であると、学科試験が600位で小論文+面接4.5点以上の受験生より合否順位は下となることがわかります。
すなわち、一次試験を通過してからは非常に二次試験重視の合否判定であることがわかります。
二次試験においては年齢の差別はなく、女性が一律で0.5点の差を設けられていたことになります。
二次試験による性別の調整により不当に不合格になっていた受験生はH30年で24名いるとのことです。このうち女性が23名で、残りの男性1名の理由については会見にて記者の方からも質問がありましたが、大学は説明を避ける形となっていました。
一般A方式以外の入試
一般A方式以外の試験においては、一次試験は年齢性別による基準は設けられていませんでした。
しかし、地域枠、国際枠入試を除く、センター独自併用、センター利用、一般B方式二次試験において二次試験で上記と同様に、女性のみが一律で0.5点高い合格基準が設けられていました。
不当に不合格になった人数と対応について
上記基準のために不当に不合格になった人数は下記の通りです。
一次試験において不当に不合格になった受験生
H30年 男性23人 女性42人 合計65人
H29年 男性20人 女性32人 合計52人
2年合計 男性43人 女性74人 合計117人
約600名の一次試験合格者のうち、実に10%にも及ぶ人数が、面接試験の機会を与えられることすらなく、年齢や性別による基準のために不当に不合格になっていたことがわかります。
当然、この中には二次試験を受験していれば合格できるような優秀な学科試験の成績をおさめていた受験生も多くいることが予想されます。
さらに、これは学科試験で600位以内の受験生のうち不当に不合格になった人数を指していると考えられます。しかし実際には601位以降の順位から合格になった、恐らくは現役や1浪の男性が存在すると思われます。その受験生を基準とすると、さらに多い人数が不当に不合格になっている可能性があります。
二次試験において不当に不合格になった受験生
H30年 男性1人 女性23人 合計24人
H29年 男性0人 女性24人 合計24人
2年合計 男性1人 女性47人 合計48人
二次試験における差別においても女性を中心として少なくない人数が不当に不合格となっています。
二次試験不合格者48名が追加合格に
二次試験で不当に不合格になった48名が追加合格の対象となると公表されました。
意向確認を行い、12/28までに意向確認の締切を行う予定とのことです。
また、追加合格の人数により、今年度の入試の募集枠が減少することも公表されました。
一次試験不合格者117名は受験料の返還
一次試験で不当に不合格になった117名は受験料の返還を行うと公表されました。
性別、年齢における差別について
東京医科大学では二次試験において性別や年齢における得点調整が行われていました。
しかし、順天堂大学では一次試験でも二次試験でも性別、年齢による大幅な調整が行われていたことが明らかとなりました。
例えば、1浪女性で調査書がBの受験生は学科試験で401位以降であれば面接の機会すら与えられることなく一次試験の時点で不合格となっていました。一方で601位以降の現役男性(恐らく)は一次試験を通過し、最終的に二次試験も合格している受験生が存在すると予想されます。
また、文科省のデータによると男性は4浪以上、女性は3浪以上の合格者はH30年の入試では存在しないことがわかっています。
学科試験で1-200位という非常に優秀な成績をおさめていても、「浪人年数の多い場合は検討」と記載されており、上記結果から恐らくは男性は4浪以上、女性は3浪以上のほとんどの受験生が面接の機会を与えられることすらなく一次試験において不合格となっていたと考えられます。
会見では「一次試験では一部不正があった」といった表現をされていましたが、実際には一次試験での調整が非常に影響が大きいことがわかります。
実際に二年間で、二次試験での不当な不合格者48名に対して一次試験では117名にものぼります。
追加合格の対象となったのは二次試験での不合格者のみで、一次試験での不合格者は受験料の返還のみと公表されました。
また、このような不正は少なくとも10年以上行われていたことも説明されました。
不明点について
601位以降の合格者の詳細
H30年の一般A方式において、一次試験600位以内の人数のうち65名が不当に不合格になっていました。つまり535名が合格していると考えられますが、実際に一次試験に合格した人数は576名です。
差し引き41名が601位以降から合格になったと考えられますがその詳細が不明です。恐らくは現役または1浪男性が大部分を占めるのではないかと考えられます。
不当に不合格になった65名の算出方法が不明です。場合によってはより多くの不当な不合格者が存在する可能性もあるのではないでしょうか。
受験料の返還の詳細
順天堂医学部の入試形式は複数併願することが可能です。
受験料は下記。
一般入試A方式,一般入試B方式,センター・一般独自併用入試,地域枠選抜入試
◇入学検定料:各60,000円
前期センター利用入試,後期センター利用入試,国際臨床医・研究医枠入試
◇入学検定料:各40,000円
例えば一般A、一般B、センター独自併用、センター利用の4つに併願した場合受験料は合計22万円になります。しかし一次試験で不当に不合格となるのは一般A方式のみですから、返還されるのは6万円のみとなる可能性があります。
順天堂大学医学部の不正入試問題のまとめ
・一次試験においても二次試験においても年齢や性別における大幅な調整が存在。
・不当に不合格になった人数は2年間で一次試験117名、二次試験48名の合計165名にのぼる。
・不正な調整は少なくとも10年以上行われていた。
・二次試験で不当に不合格になった48名は追加合格対象となり12/28までに意向確認を行う。今年度入試においてその分の募集枠の減少が行われる。
・一次試験で不当に不合格になった117名は追加合格対象とならず、受験料の返還のみが行われる。順天堂は多くの入試形式があり併願する受験生も多いが、受験料の返還が一般A方式の分だけになるのかは不明である。
入試における調整のやり口が東京医科大学以上に悪質であったといえます。しかし会見での説明理由、不利益を被った受験生への対応方法など現時点において到底納得のできるものではありませんでした。
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