世間的に医学部は「とにかくお金がかかる」というイメージを持たれているように感じます。
特に私立の医学部についてはそのイメージが強いのではないでしょうか。
もちろん私立医学部の学費は他学部と比べても非常に高額です。
そのため「入学後、学費の他にかかる費用はあるのか」と不安に感じる方も多いようです。
入学後、学費以外にかかる費用として
・生活費:一人暮らしの場合は家賃なども必要
の2つが大きいと言えます。
ただ。これらに関しては他学部の学生とはそこまで大きく変わりません。
医学部での勉強に必要な費用
勉強にかかる費用はそれほど高額ではありません。
学校生活のみで必要な費用としては、入学から卒業まで40~60万円程度になると思われます。
金額だけ聞くと高く感じるかもしれませんが、医学部は6年間あるため1年では10万円ほどです。
これらは国公立でも私立でも大きくは変わらないかと思います。
教科書代
6年間で10万前後~20万円ほどが一般的です。
大学によりますが、教科書の購入を強制されるケースはそこまで多くありません。
教材は指定される場合が多いですが、図書館で借りたり、先輩から譲ってもらうという医学生が多い印象です。
授業は配布されるプリントを元に進むものが多く、教科書を持っていなくても困ることがないためです。
買ったものの卒業まで一度も開かずに終わった、ということもよくあります。
インターネットでは「100万円以上かかる」なんていう情報も流れていますが、さすがに信憑性が低い情報ではないかと思います。
情報量も膨大、図解が多いため全編カラーという図鑑のような教科書が多く、一冊一冊は通常の教科書よりも高いため、すべての参考書をしっかり揃えると高額になってきますが、上記の通りすべてを揃える人はほとんどいません。
実習等に必要なものなど
白衣や聴診器、ペンライトなど、実習で使用する教材も一部購入する必要があります。
総額は50,000円にも達しないほどです。
大学によっては解剖セットや指定のゴム手袋などを購入する場合もあるようですが、それらも一つ一つはそこまで高額ではありません。
購入のタイミングも実習が増える2年次以降で購入すればいいので、入学時に用意する必要はありません。
医師国家試験対策
国家試験に関しては、多くの医学部において、大学の授業とは別で個別に勉強をする必要があります。
国家試験対策予備校の動画の受講、模試、参考書の購入などで10~20万円ほどかかるのが一般的です。
本格的に予備校に通う人は高額になりますが、学年の10%もいないと思われます。
合格率は9割と高い医師国家試験ですが、かなりの勉強量を必要とします。
そもそも試験や暗記に慣れている医大生しか受けないため、必然的に受験者全体のレベルが高く、合格率も高いというのが実情です。
なお医師国家試験の受験料が15000円程度、合格後に医師の免許登録料として60,000円ほどかかります。
その他の費用
医学部特有なものとしては、実習前の予防接種(B型肝炎など)や指定の保険への加入が自費で必要となる場合があります。
これらはまとめて20,000~30,000円ほどです。
またCBT、OSCEという実習に入る前の4年次までに受験しなければいけない試験があります。
受験料は大学によりますが、25,000~30,000円ほどです。
大学からの強制ではありませんが、ノートパソコンやタブレット端末などは頻繁に使用するため、それらは入学前に用意しておいた方がいいかもしれません。
意外とかかる生活費
自宅から通える私立医学部と遠方の国公立、本当に費用がかかるのは?
私立の医学部に6年間通うには、最低でも約2000万円以上かかります。
対して国公立の学費は350万円前後です。
そのため「何がなんでも国公立に行かなくては…!」と地方の国公立を志望する生徒がいます。
保護者の方に「どこでもいいからとにかく国公立に行ってくれ」と地方の国公立を勧められる生徒も多くいます。
ただそこで考えて頂きたいのは、大学を卒業するまでにかかる費用は学費だけではない、ということです。
現在東京に住んでいる場合、自宅から都内の私立医学部に通う場合と、地方で一人暮らししながら国公立医学部に通う場合をそれぞれシミュレーションしてみましょう。
地方で一人暮らしをしながら国公立医医学部に通う場合
・学費:350万円/6年
・家賃:5万円/月(1Kの全国平均家賃) →引っ越し代も含めて、400万円/6年
・生活費:10万円/月 →720万円/6年
加えて地方の国公立医学部は車がないと生活が難しいエリアにあることが多いため、車の購入費や維持費も必要です。
軽自動車だとしても
・車代:120万円(新車)
・燃料・保険等含めた維持費:35万円/年(1年間に均した場合の金額) →210万円/6年
・駐車場:5,000円/月(物件内の駐車場) →36万円/6年
大学やエリア、暮らしぶりでも大きく変わってくる可能性がありますが、学費と合わせて1800万円ほどかかる計算です。
一人暮らしをするだけで6年間で1000万円程度はかかる可能性があります。
自宅から都内の私立医大に通う場合
比較的学費が安い日本医科大学でシミュレーションしてみます。
・学費:2200万円/6年
・生活費:50,000~60,000円/月 →400万円/6年
上記と同じく生活費は人によって大きく変わりますが、2600万円ほどかかる計算です。
比較した結果
学費だけを比べると地方の国公立へ進学したほうがいいと思う人は多いようですが、上記のように実際には学費以外にもこれだけの費用がかかります。
また自宅から通うと生活費は家族と共有できるので割安になりますし、自分で家事をする手間が省けるなどのメリットもたくさんあります。
自立のためにも一人暮らしをした方がいいという意見もありますが、医学部は勉強も部活も他学部よりハードな大学が多く、慣れない一人暮らしでは生活がおろそかになりがちです。
地方の国公立医学部に通うと部活以外にあまりすることがなく、部員や同級生で連日のように宅飲みをしてしまっている医学生も少なからずいます。
自宅から通うメリットも考慮に入れて検討しましょう。
部活動にかかる費用が大きい
医学部では原則としてサークルではなく部活形式であり、練習等も高校の部活のように参加が義務付けられている部活がほとんどです。
そのため遠征試合や飲み会、合宿、大会など、「部活にお金がかかる」というのはほとんどの医学生が口にします。
恐らく最もお金がかかるのは部活だといえます。入る部活によってもかかってくる費用は大きく変わりますので、その点は考慮に入れておきましょう。