医師になることのメリットとデメリットについて

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※この記事は完全に独断と偏見によって記載しています。あくまで一個人の意見として捉えていただけますと幸いです。

執筆者について

私は医学部を卒業後、医師国家試験に合格し、2年間の初期臨床研修を修了しました。そのため「資格としては」臨床や開業ができる立場です。
しかし、初期臨床研修修了後は臨床を行わず、医学部専門予備校を運営する会社を創業し現在まで経営しています。

そういった点で、自分が医師として働いているからというポジショントークではなく、少し客観的な立場として捉えたお話ができるかと思います。
医学生や初期研修医としての自身の経験、先輩や後輩、同僚の医師、それからこれまでお会いしてきた数々の尊敬する医師の方などからお聞きしてきた話などをふまえてこの記事を書いていますので、多少参考になることがあれば幸いです。

医師になることのメリットについて

率直な感想としてメリットはたくさんあるのですが、あくまで個人的な見解で大きな軸でまとめてみます。

社会的信頼性がある

これは医師になることの最大のメリットだと思います。
それこそ親戚や友人などと話していても医師であるという時点で大きく信頼されると思います。
親戚で「息子(娘)さんいまどうしているの?」と聞かれて、「医学部に通っています(医師になっています)」と答えたらまず例外なく称賛の言葉がもらえると思います。

個人的には医師=社会的信頼性があるというわけでもないと思いますが、世の中そんなものです。

 

個人的な経験で最もこのことを強く感じたエピソードをお話します。

会社を創業した際に銀行口座を開設する必要があったので、某大手銀行の窓口に申請しました。
すると、窓口の女性の方からいくつか質問をされました。
社名の由来、事業内容、事業の採算性、将来の夢・・など結構長い時間かけて質問されたので丁寧に回答しました。私自身当時は26歳で若かったこともあると思いますが、ほとんど興味なさそうな印象をされていたので開設できるか不安に感じていました。

しかし、最後に「これまでの経歴について」聞かれたので、もちろん正直に医学部を卒業後研修を終えていることを伝えました。内心はむしろ会社においての社会人経験がないのでそこを突っ込まれるのかなあと不安だったのですが、その瞬間に
「えっ!お医者さんだったんですね、それはすごいですね!でもどうしてまた起業されるんですか?」
などと次々に質問いただきました。
そしてだいぶ話が脱線するほど盛り上がったので、
「あの、開設はできますでしょうか・・?」とお尋ねすると、
「あっ!はい、やっておきますから大丈夫ですよ〜!」とのことでした。
手のひら返しってこういうことかなあと思うほどだったので強烈に当時のことを覚えています。

当時は会社経営とは事業計画や事業モデルなどが大切だと思っていたのでしっかり準備して窓口にいったのですが、そこではなく「医師であること」の一点だけで開設できたように感じています(そしておそらく真実だと思います)。

 

銀行口座だけでなく、例えば家の賃貸をするときにも、やはり医師であるということは重要だったと感じました。

そして、私が非常に尊敬する経営者の方(医師ではない方)から次のお話をされたことがあります。
「経営者の最大のデメリットは社会的信頼性がないこと。企業に勤めているときは大企業だったこともあってそれこそ家を借りたりするときに困ったことはなかったけど、起業したときは本当に大変だった。(君は)医師というだけでそのデメリットがなくなっているから羨ましいなあ」

その方は人としても経営者としても非常に優れた方だったので驚きましたが、同時に「社会ってそんなもんなんだなあ」と感じました。

 

今では「社会ってそんなもんなんだなあ」という気づきはとても大切だと思っています。
いくら理想を追いかけても、実際は「そんなもん」の社会で生きていかなければいけないからです。

「そんなもん」の重要な例としては下記があります。

・学歴
・お金
・社会的地位(=信頼性)

学歴やお金、社会的地位があるから優れた人とは決して言えませんし、これらがないから優れていないわけでも当然ありません。
それに、そんなことは恐らく誰もがわかっています。

しかし、例えば銀行口座を開設するときでも家を賃貸するときでも、客観的にみて納得できる指標となるものが求められ、これらの3つが重要になります。上記のエピソードで銀行口座を開設するときに担当いただいた方も、本当は事業内容や夢を聞いて判断したいと考えていらっしゃったと思います。ですが、もし問題が起こったときに上司や対外的に説明できるものとして客観性は必要になると思います。

賃貸でも、もし揉め事が起きたとき「医師免許がある人だったから賃貸を許可した」といえることは非常に大きいはずです。「そうか、なら担当者に非はないか・・」とどうしても思わせる要素になるからです。

 

そして、医師になることはこの3つの要素である 学歴、お金、社会的地位 をすべて満たします。
これは究極的に重要です。

例えば東大をでていてもお金や現在の社会的地位があるとは限りません。
お金があっても褒められた方法で稼いだわけではないかもしれません。
大企業に勤めていても学歴やお金はないかもしれません(学歴はある程度担保されてそうですが)。

しかし医師であれば、ほぼ間違いなく3つすべてを満たします。(これはいくらでも反例がだせますが、少なくとも世間ではそう思われています)

社会で生きていくためには、「実際どうなのか」よりも「どう思われているか」が重要になる場面は非常に残念ながら、多々あります。

会社を経営していると社会がみえてきますが、その中で強く感じていることです。

「くだらねえ」と思われる方もいるかと思いますが、例えば将来もし自分の娘が結婚相手を連れてきたとして、
「お医者さんで」と紹介されると、どこか安心してしまう人は多いと思います。
残念ながらそんなもんなのです。

そして、医師であることは「そんなもん」を自然と満たすことができるので、「そんなもん」ではない重要なことに意識を向けることができるという大きなメリットがあります。

恵まれていると気付きづらいのですが、世の中には「そんなもん」がないために苦しんでいる人はたくさんいます。

医学生になった人は、自分の恵まれた環境を意識的に自覚して、「そんなもん」ではない重要なことについて考え行動して欲しいと思っています(ブーメランで自分にも当てはまりますが)。

色んな働き方ができる、様々なタイプの人がいる

長くなりましたが2つ目です。

医師はよく「コミュニケーションが得意だ」「勉強や研究が得意だ」「手先が器用だ」「体力がある」などと思われがちですが、これらをすべて兼ね備えたスーパーマンみたいな人はほとんどいません(たまに存在しますが)。
当たり前ですが、医師だって人間ですから欠点もたくさんあります。

重要なのが、医師は診療科や働く場所、働き方によって様々な選択肢があるのでいろんなタイプの人が自分にあった働き方をみつけることができるということです。これは非常に大きなメリットだといえます。

例えば患者さんと直接接することが苦手な人は、外科や麻酔科、放射線科、病理などコミュニケーションではない部分で勝負できる科を選ぶことができます。
(決してこれらの科の医師は患者さんと直接接することが苦手だといっているのではありません。むしろ患者さんと直接接することが非常に得意な医師もたくさんいます。しかし、例えコミュニケーションが得意ではなくても、手術や手技、読影に長けていれば必ずその人にしかできない仕事があるということです。)

勉強や研究が好きではない人(医師でも多いと思います)はコミュニケーションを重視した臨床科を選べばいいし、手先が器用でない人(たくさんいます)も手技をメインとしない科(たくさんありますが内科の多く、精神科、産業医などは最たるものでしょう)を選択すればいいことです。

体力に自信がなくても科や働き方を選ぶ(例えば大病院や大学病院ではなくクリニックで働くなど)ことでいくらでも選択肢はあります。

 

選択肢が多いことは医師になることの非常に大きなメリットだといえます。

つきつめればすごいところまでいける、やりがいがある

表現が稚拙で恐縮ですが、、

医師はどの科でも突き詰めるといわゆる一流という領域に達することができる職業だと思います。もちろん他の職業でもあてはまるかと思いますが、少なくとも医師という職業はこれに該当します。

そして、同時にやりがいがある仕事です。人々の健康を支える職業なので当然です。

突き詰めるとすごいところまでいけるやりがいのある仕事というのは、向上心がある方にとっては非常にメリットが大きいといえます。

すごい人がゴロゴロいる業界

これも表現が稚拙で恐縮ですが、、

医師は本当に一流と呼ばれるようなすごい人がゴロゴロいます。

よく医学生は大学の授業がつまらないと嘆きます(私もそうでした)が、その授業を担当している医師が実は世界的にもすごい人だったということはとてもよくあります。
むしろどこの医学部であっても大学におられる各領域のトップの人はほぼ例外なくすごい人なので、授業がつまらないというだけで、話を直接聞くことができればとても面白いと感じるはずです。

そして、大学だけでなくそれこそ小さい病院やクリニックにもすごい医師の方がゴロゴロいます。

先輩、同僚、後輩が全員医師

当たり前ですがよく考えるとすごいことです。

1つ目の項目でお話した社会的信頼性という点でも、知り合いがみな社会的信頼性が大きい医師であるということは普段は見えないながらも非常に大きなメリットです。

医師の友人の結婚式に呼ばれると、結婚相手も医師、そのご両親も医師、両家とも主賓の方が医師などということはよくあります。

普段は感じないながらも大きなメリットを享受していると言えます。

安定している

近年、技術の発達やAIの発達などにより、医師は不要になるのではないかという持論を展開されている方もいらっしゃいます。

しかし個人的な予想ですが医師が不要になることはまず起こりえないと思います。

医師の働き方自体が大きく変わる可能性はありますが、人々の健康の専門家である「医師」という職業がなくなることは考えづらく、もしそれがなくなるのであればあらゆる専門家が先になくなっているとも思います。

また、むしろ技術が発達するからこそ、医師一人ができる裁量が大きく拡大し、より一層やりがいのある働き方が可能になると思います。

これについては非常に長くなる壮大なテーマなので、また別の記事で書けたらと思います。

優秀

医師あるいは医学生はほとんどの人が”優秀”です。頭がよく仕事ができる人が多いです。

もちろん医師や医学生の全員がそうではないのかもしれませんが、ほとんどの人が優秀です。

よく医師や医学生は社会に出ると通用しないといわれるのですが、全くそんなことはなくむしろ優秀だと思います。

当塾では医学生のみを講師として採用しています。しかし、社会人講師の方からご応募をいただいたり、医学部以外の学生さんからご応募いただくこともあります。
そして面談をしたり少し一緒に仕事をしていただいたこともあります。

結論からいって、医学生はやっぱり優秀です。
経験がないだけであって、教えるとすごいスピードで吸収していきます。
医学生全員がそうとは言い切れませんが、比較するとものすごく優秀だと実感しています。

その点は安心していいと思います。病院以外の会社で勤めてもほぼ間違いなく活躍できます。

ほとんどの医師が真面目で患者さん想いで人としても尊敬できる

これを1つめにあげていない自分に嫌気がさしますが、これは個人的に医師になった(というと語弊があるので医師免許をとった)ことの最大のメリットだと感じています。

会社経営をしていると色んな業種の方とお会いするのですが、残念ながらお金のことや出世のことしか考えていない人もそれなりにいらっしゃいます。

医師の中でもそういう人はいるのかもしれませんが、どの病院で働いている方でも、ほとんどの医師は真面目で、患者さん想いです。そして人としても尊敬できるような方です。

口では「こんな重労働やってられねえ」「金のためにやっているんだ」といっている医師も何人かいましたが、そういう人に限って患者さんが急変したりすると真っ先に患者さんの元に向かったり研修医やスタッフに的確に指示を出す姿をたくさん目にしてきました。

いわゆる「ツンデレ」ですね。

何より口先で何を言おうが、「病院」という場所で「患者さんのために」仕事をしている時点で、そうそう悪い人はいないと思います。

医師は「経営のことやお金のことを知らない」ことを問題視しているような”評論家”の方もいらっしゃいますが、それは患者さんに集中できる環境があるからです。それに経営やお金のことはそんなに難しくない上、医師はほとんど優秀なので、必要があればすぐできるようになります。
むしろ、お金のことや数字のことだけを追いかけるような仕事をしている人に魅力はあるでしょうか(反語ではなく疑問です)。

医療現場を離れて最も痛感したことは、
「先輩も同僚もみんなすごいいい人だったなあ」
ということで、実は個人的に考える医師になったことのメリットはこの一言に尽きると思っています。

医師になることのデメリット

結論は「デメリットはない」です。

細かい点でいえば、

・重労働&激務

・(特に女性の場合)結婚時期が遅れやすい

・若手のときは激務で薄給

・責任がある

などが医師の声としてあがっていますが、これらは実は「自分次第でどうとでもなる」ことだと思っています。また、これらは医師に限ったことではなくどの職業でもある程度当てはまるともいえます。

実際に様々な形で自分にとって最適なゆとりのある形で仕事をされている医師の方はたくさんいらっしゃいます。

また、今後は社会的に働き方が見直されている中で、医師も働き方が改善されていく方向に進んでいくと思います。

 

「医師になると視野が狭くなる」という医学生が抱きがちなデメリットも、自分次第でどうとでもなりますし、むしろ不必要に視野が広くてふらふらしていることは褒められることではありません。

 

医学生の中には重労働かつ薄給(若手のころは)という情報を聞いて不安になっている人も多くいるかと思います。
しかし、働き方を選ぶことで多くの場合はどうとでもなります。

そもそも医師免許をとったからといってがっつりと臨床医をしなければいけないわけではありません。アルバイトの形もできますし、臨床ではなく研究をしたり、臨床の中でも比較的ゆとりのある科を選ぶこともできます。

また、医療ではない会社に就職したり、起業をすることもできます。これを言うと怒られてしまうかもしれませんが、職業選択の自由ですからもちろん可能です。

よく「医師免許をとった人は医師になるべきだ。医師にならない人がいるから医師の数が足りないんだ」という医師の方がいらっしゃるのですが、個人的に半分ほど誤っていると思っています。
今回の新専門医制度の導入によって専門医の数がさらに都心部に集中する結果となっているようです。
新専門医制度を導入したのは現場の医師ではありませんし、もちろん研修医や医学生の責任ではありません。

「医師が不足している」「地域の偏りがある」ことは国や医療としての制度、システム上の問題であって個人の医師に責任を追求するものではないと思います。
(もちろん個人の医師が自分の力で地域医療に貢献したいと考えることはとても素晴らしいことであって、あくまでそれを個人の医師に責任を追求するものではないということです。)

 

もし医学生や研修医の方で将来について思い詰めている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談いただけたらと思います。twitterでも当ブログのお問い合わせからでも大丈夫です。
私自身はペーペーなのであまりいいことはいえませんが、視野が広く助けになっていただけそうな医師の先輩が多くいますので、ご紹介するなどはできるかと思います。

最後に、医学部を目指す人へ

医学部受験や医師についていろいろと持論を展開している記事や雑誌、本などが近年増えてきています。
それをみていろいろと不安になる人もいるかと思います。

こういったメディアは私も目を通していますが、ほとんどが医師ではない人や視野の狭い人が持論を展開しているだけです。

医師の方は(文句はいっているかもしれませんが)ほとんどの人が素直に尊敬でき、人としても魅力的な方ですし、やりがいをもって働かれています。

そして、受験生や医学生のときには医師像や将来の働き方はほとんど見えていません。少しずつ自分にとって最適な働き方が見つかってくると思います。

 

医学部に合格するためには多大な努力が必要になります。
また、努力をすれば必ず合格できるものでもありません。

しかし、努力をしたこと自体には必ず価値があります。

よく、「勉強をすることに何の価値があるのか」という批判をされている人がいます。

私自身、毎年多くの医学部に進学した生徒をみてきていますが、勉強をすることで得られるものの中で重要なことは、教科の知識や成績、合格という結果では決してありません。

勉強という努力をすることで、一回りも二回りも人として成長しています。

もしも「勉強してきた人は性格が悪い」「勉強しかできない」などと言う人がいれば、あまりにも世間知らずだと思います。
世界中の医師の方や、当塾にいる医学生講師や生徒をみればグウの音もでないと思います。
世の中には勉強もできて、人としても素晴らしい人はいっぱいいますよ。

そして、もちろん勉強だけではありませんが、勉強することは人としても成長することに大きく影響することは断言できます。

 

ということで、医学部合格や医師を志す人は、いろんな不安を抱えて迷いながらも前進していただけたらと思います。

 

医学部に合格するための具体的な各教科の勉強法や参考書スケジュールについては医学部(国公立、私立、難関大)に1年で合格する勉強法まとめをご覧ください。

 

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