東京医科大学の不祥事から考える医学部推薦・AO入試や裏口入学の実態

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東京医科大学において、文部科学省の局長(佐野太容疑者)が東京医科大学を事業支援対象に選ぶ見返りに、自身の息子を合格させてもらった容疑があり逮捕されたという事件がトップニュースになっています。

 

これは完全に氷山の一角であり、少なくとも東京医科大学は裏口入学を受け付け、またこれまでも行われていたことが伺えます。

医学部の裏口入学(コネ入学)は以前から存在しますが、現在においても存在していることは医学部予備校で指導している中で耳に入ってきますので間違いないといえます。

裏口入学の代表的なものは下記があげられます。

・一次試験に合格すると二次試験は免除される(二次試験は面接や小論文の試験ですが、実質一次試験=学科試験の点数順で合格が決まる医学部が多く、本質的には一次試験の点数に加点されているのとほぼ同義です)
・一次試験の点数に加点される
・入試の解答を渡している

中には入試の解答をもらった人がいるという衝撃的な話も耳に入ってきますのでこれを機に真偽を調査して欲しいと思っています。

 

裏口入学の対象となっているのは、
・受験生の親御様や親族のコネ
・高校とのパイプ
・予備校のコネ

などがあります。
医学部専門予備校の中には医学部とのパイプにより裏口入学で数名合格させている予備校も存在するようです。これまでの当塾の卒業生数名から、他の予備校の説明を聞きに行ったときに、「○○医学部なら塾のコネで合格させてあげられる」といった説明・勧誘をされたという声があがっています。

 

さて、近年入試形式で推薦入試やAO入試の募集枠を設置する医学部が非常に増えてきています。

推薦入試やAO入試は、「勉強だけでなく人間性も優れた人が合格できる」という医学部入試においては理にかなっている入試形態にもみえます。

しかし、裏口入学、コネ入学の温床になっている可能性が極めて高いと思われます。

一般入試では学科試験がありますので、どうしても点数を開示されたりする際に説明が必要になってきます。そのため二次試験の免除や一次試験の点数に少し加点をするなどの工夫はできても限界があります。

(7/15更新 今回の東京医科大学の裏口入学では、一般入試にて一次試験にも通過していなかったのに裏口入学させたとの報道がありました。そこまでやってしまうと何でもありですが、もはや推薦入試でクリーンな入試をしていると考える方が無理があるといえます。
東京医科大学の推薦入試では募集要項が現役生のみとなっています。該当学生は浪人生だったので推薦入試の受験資格を満たしていなかったといえます。)

 

ところが、推薦入試やAO入試では学科試験がほとんどの医学部では実施されないか、実施されても非常に簡単な内容の試験で差がつかない試験であることが多く、裏口入学の際にほとんど制限なく合格させることができる試験形態ともいえるのです。

 

 

例えば今回世間を賑わせている東京医科大学の推薦入試の出願条件や入試要項をみてみましょう。

・募集枠:20名以内(一般入試の定員が75名なので決して少なくない募集枠です)
・現役生で評定平均4.0以上
・試験形式
小 論 文
面接
書類審査(調査書、志望の動機書、推薦書)
適性検査
基礎学力検査(数理的問題)

となっています。

さて、基礎学力検査についてですが、東京医科大学は不思議な試験内容となっています。
多くの医学部では化学物理生物のうち2教科が必須であるため、基本的には医学部受験生は2教科に絞って勉強をします(一部3教科を課していた医学部もありますが非常に少数です)。
実際に東京医科大学の一般入試の学科試験では2教科での受験です。

ところが、この基礎学力検査においては、化学物理生物の3教科が出題されます。
さらに、内容としては非常に簡単で、例えば化学であれば周期表を埋めるというような高校1年生レベルの出題内容であり、医学部受験生においてはあまりにも簡単で全く差がつかないような内容となっています。

そのため、勉強していない教科の対策が必須であると受験生は考え、もし不合格になっても3教科目(勉強していない教科)の出来がよくなかったからだと捉えられる仕組みになっています。

基礎学力検査がこのような試験内容ですので、上記をみると実質的に裏口入学があった場合、証拠を掴みづらい試験形式になっているといえます。

 

さて、ここで大切になってくるのが、推薦入試では本当に人間性が優れた受験生が受験しているのかという点です。

国公立医学部の推薦入試は評定平均4.3以上としている医学部が多いのに比べて、評定平均4.0以上というのは決して優秀な成績とはいえません。
また、私立医学部の推薦入試の中には評定平均3.8以上というような医学部も少なくありません。

 

そして何より、国公立医学部と違い、私立医学部では高額な学費が必要となります。

多くの私立医学部の推薦入試では合格すると原則として進学を確約することが条件となっています。(東京医科大学も同様です)

常識的に考えるとわかりますが、現役生で成績もよく人間的にも優秀な受験生は、辞退ができない高額な私立医学部の推薦入試は受験しない人が圧倒的に多いと考えられます

 

簡単にいってしまうと、東大、京大など難易度が高く、多くの優秀な受験生が入学を希望するような大学であれば、推薦入試を実施することで本当に優秀な学生を合格させることができると思います。勉強だけでなく何らかの専門性があったり人間的にも優れている学生を入学させることができると思います。

しかし、学費が高額であり多くの受験生には門戸が開かれていない私立医学部が推薦入試を実施したところで、本当に優秀な学生は受験しないはずです。

 

では何のために推薦入試を実施するのかを考えてみると、推薦入試を実施する医学部側のメリットとしては以下が挙げられます。

・受験料による収入の増加

これはダイレクトです。多くの私立医学部の推薦入試では出願料が6万円と高額です(一般入試と同じ出願料です)。推薦入試に100名でも出願すると少なくない収入になります。

 

・一般入試の偏差値を上げる効果

推薦入試だけでなく、センター利用入試などの募集枠を設置することで一般入試の募集枠が減少すると、当然ですが一般入試の偏差値が上がります。

 

例えば東京医科大学は河合塾での偏差値は67.5ですが、一般入試の募集枠は75名です。

一方、慈恵会医科大学は東京都地域枠5名を除き推薦入試やセンター利用入試などの特殊な入試形式を一切設置しておらず一般入試の募集定員が105名です。河合塾での偏差値は70となっています。

 

一般入試の募集枠を75名に絞って偏差値67.5の医学部と、一般入試の募集枠が105名もいて偏差値70では、どちらの大学が優秀な学生に希望されているかは一目瞭然です。

このように推薦入試やAOのような特殊な入試を設置することは一般入試の募集定員を下げ、一般入試の偏差値を上げる効果があります。

東京医科大学の募集枠は平均的な方で、中には募集枠がもっと少なく偏差値も低い私立医学部は多くあります。
獨協医科大学:一般入試58名 偏差値62.5
埼玉医科大学:一般前期試験61名 偏差値62.5
東海大学:一般入試65名 偏差値65(ただし理科1教科での試験なので実質偏差値は62.5程度と予想される)
金沢医科大学:一般前期試験65名 偏差値65
愛知医科大学: 一般前期試験65名 偏差値65
川崎医科大学:一般前期試験60名 偏差値62.5

 

・学力だけではなく人間的にも優秀な学生をとっています、というアピール

上述したとおりですが、やはり推薦入試というからには、さも学力だけでなく人間的にも優秀な学生しか合格できないという「イメージ」があります。

 

・そして、やはり裏口入学の窓口

今回の事件を受けますと、これは考えざるを得ないといえます。
一般入試で裏口入学をさせているのに、推薦入試は完全にクリーンな入試をしているとは到底考えられないと思われます。

 

 

推薦入試の実態について

推薦入試で合格された医学生や当塾から過去に推薦入試で合格した卒業生などからヒアリングした推薦入試の実態について説明します。

 

・学力が総じて低い

一般入試の合格者より推薦入試の合格者は学力が総じて低い傾向にあります。

当塾でこれまで推薦入試で医学部に進学した卒業生の偏差値は総合で50台前半がほとんどで、中には偏差値40台で合格した人もいます。

偏差値50前後というと医学部以外の学部をすべていれても全国平均レベルなのでいかに学力が低いかがわかります。

「医師・医学生」というと学力が高いイメージですが、全くそうでない人も数は少ないですが存在するということです。

 

・試験内容が非常に簡単

英数理の学力試験を課している私立医学部の推薦入試が多くありますが、試験内容は非常に簡単で、高校1年生レベルです。医学部の一般入試の対策をして推薦入試を受験した卒業生はみな「拍子抜けするくらい簡単で何を試験しているのかわからない」と教えてくれています。

 

・高校とのパイプの存在

指定校推薦など、医学部が指定している高校の中で推薦する受験生を決める指定校推薦の形式をとっている医学部も多く存在します。

指定校推薦は、いってしまうと大学と高校のパイプにもなりますから、例年指定校推薦で合格している高校から全く合格しなくなると信頼の問題にも関わりますので高校での指定校推薦に選ばれると合格できる可能性は非常に高くなります。

(私も高校時代に某国公立医学部の指定校推薦の対象となり当時の担任の先生から受験を推奨されました。考えて辞退したのですが、指定校推薦で受験したらまず合格できるということを先生からは伝えられていました。)

 

 

余談ですが、上記のことから、当塾では推薦入試での合格者は原則として合格実績には含まないようにしています。推薦入試で合格した卒業生の中には優秀だといえる人もいますが、他の卒業生と比較して突出して優れているかといわれると、そうとは言えません。
何よりフェアではない試験形式なので、一般入試での合格とは全く別物であるため推薦入試での合格者は実績に含まないようにしています(別でわけて明記しています)。

 

 

最後に誤解を招かないようにお伝えしたいのですが、医学部における裏口入学が存在するのはまず間違いないといえますが、それは非常に少数です。

(7/15更新 今回の東京医科大学では毎年10名の裏口入学があったという報道がありました。一般入試の募集枠は75名ですので毎年10名が裏口入学というのはあまりにも大きな数字です。さらに多い年では20名の裏口入学があったほか、今年の試験では70名の裏口入学申し込み者がいたとの報道もありました。
非常に少数の”非常に”が怪しくなってしまいました。。ただ、いずれにしても正当な方法で入学している学生の方が多いと信じています。)

ほとんどの医学生が過酷な勉強ののち、学科試験で合格点をとって合格しています。
これは私立医学部においても同様で、ほとんどの私立医学部の医学生は成績が優秀だといえます。

ですので、今回の事件を受けて、
「東京医科大学では裏口入学は存在する」
ことは事実ですが、

「東京医科大学の医学生はみんな裏口入学だ」
「東京医科大学の医学生は優秀ではない」
というのは全くの誤りです。

昨年の当塾の卒業生でも、東京医科大学は偏差値70以上でも不合格になってしまった人もいますし、一般入試で合格した卒業生の平均偏差値は67.5前後にあります(河合塾のデータと概ね一致しています)。

 

だからこそ、ごく一部の裏口入学のために誤解をされてしまう医学生が不憫であり、裏口入学はなくなってほしいと思います。
また、推薦入試やAO入試のすべてがそうではありませんが、裏口入学の温床になるリスクがあるので、近年医学部において推薦入試やAO入試の募集枠が急激に増加していることに対しては危惧しています。

 

医療をよりよいものにするためには、公平な入試を実施することがまず大切になってくると思っています。

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